更新日:2026年10月28日

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神労委令和6年(不)第8号事件命令交付について

神奈川県労働委員会は、標記の事件について、申立人の不当労働行為救済申立てを棄却する命令を交付しました。

1 当事者

申立人 X(組合)

被申立人 Y(会社)

2 事件の概要

 本件は、会社が、【1】組合員Aに対し、懲戒処分を示唆したことが労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第1号に、【2】令和6年3月7日に行われたAの労働問題を交渉事項とする団体交渉(以下「本件団交」という。)において、会社と申立外Zとの間の業務委託契約書(以下「本件委託契約書」という。)を開示しなかったことが同条第2号に、【3】組合が行ったビラ配布等の組合活動について法的措置を検討するとの抗議文を組合に送付したことが同条第3号にそれぞれ該当する不当労働行為であるとして、組合から救済申立てがあった事件である。

3 命令の概要

⑴ 主文

 本件申立てを棄却する。

⑵ 争点及び判断の要旨

(争点1)

 会社が、Aに対し、懲戒事由に該当する可能性を示したことは、Aが組合に加入したことをもって行われたものとして不利益取扱い(労組法第7条第1号)に当たるか否か。

(判断の要旨)

 会社が、Aに対する懲戒処分を検討している旨通知したことは不利益性が認められるものの、会社の就業規則等に照らすと、申立外Zの経費精算に関する業務命令(以下「本件業務命令」という。)に係るAの業務態度や、Aによる社内情報の持ち出し等の行為を懲戒処分検討の対象としたことは不合理とはいえない。

 会社による懲戒処分の可能性の指摘は、Aの各行為から数か月経過した時期に、Aの組合加入通知を兼ねた団体交渉申入書(以下「本件団交申入書」という。)に対する組合あて回答書(以下「本件回答書」という。)においてなされているが、本件団交申入書には、本件業務命令やそれに関連する事項を議題とする団体交渉を申し入れる旨とともに、Aの労働問題については組合を通じて協議及び交渉を行うよう求める旨が記載されていたことを踏まえると、会社が、組合から申入れのあった議題について交渉を始めるに当たり、本件業務命令に係るAの業務態度が懲戒処分の検討対象となっていることを、交渉窓口である組合に伝える行為であったとみるのが相当である。

 また、会社は、本件業務命令に関するメール群が添付された本件団交申入書が組合から送付されたことによって初めて、Aが会社の許可なく社内情報を持ち出し、組合に提供したと認識したものと認められるから、本件団交申入書に対する回答と併せて、Aによる社内情報の持ち出し等について懲戒処分の可能性を指摘するとともに、社内情報を持ち出した理由等を把握するために、弁明の機会を設けることは会社の対応として不自然とはいえない。

 そして、組合は、本件団交申入書において、Aの労働問題について組合員と直接交渉をしないよう会社に要求していたのであるから、会社が、Aに対する懲戒処分の可能性の指摘及び弁明の機会の付与の通知を、組合を名宛人とする本件回答書において行ったことは、組合の要求に従ったに過ぎず、Aが組合に加入したことをもってなされたとはいえない。

 よって、会社がAに対し、本件回答書により懲戒事由に該当する可能性を示したことは、Aが組合に加入したことをもって行われた不利益取扱いに当たるとは認められない。

(争点2)

 会社が、本件団交において、本件委託契約書を開示しなかったことは不誠実団体交渉(労組法第7条第2号)に当たるか否か。

(判断の要旨)

 会社は、本件団交において、本件委託契約書には企業間の機密情報が含まれていること等を理由に同契約書を開示できない旨回答するとともに、申立外Zの事務を会社の業務としてAに命じた根拠を求める組合に対し、一定の合理性のある説明をしていたというべきであり、組合が求める本件委託契約書の開示が直ちに必要であったとは認め難い。

 また、組合が本件団交の席上、機密情報を黒塗りにした上での開示を提案したところ、会社は、不所持等を理由として開示を行わなかったが、組合は、本件団交後、本件委託契約書の開示を求めることもなく、会社が組合の提案する和解案に応じないことをもって自ら交渉を打切り、会社に対して新たに団体交渉を申し入れることもなかったのであるから、会社が本件団交の後に特段の対応を講じなかったのもやむを得ず、当該開示の求めに係る協議が進展しなかったのは、組合側の事情によるものと捉えるのが相当である。

 以上の会社及び組合の各対応を総合すると、本件団交において、本件委託契約書を開示しなかった会社の対応は、不誠実団体交渉に当たるとは認められない。

(争点3)

 会社が、組合のビラ配布等の組合活動に対し、令和6年6月24日付け「抗議文」を送付したことは組合の運営に対する支配介入(労組法第7条第3号)に当たるか否か。

(判断の要旨)

 会社が組合に送付した抗議文(以下「本件抗議文」という。)は、組合が配布したビラ(以下「本件ビラ」という。)に記載されていた内容に即して、会社が認識している事実を具体的に述べて反論しているものであって、このような反論をすること自体は会社の行為として許されないことではない。また、本件抗議文には、今後組合が同様の行為を繰り返した場合は損害賠償請求等の法的措置も検討せざるを得ない旨が記載されていたが、本件ビラには、会社と組合との間で認識・見解に齟齬のある内容が含まれていたことを踏まえると、会社が本件抗議文において損害賠償請求等の法的措置の検討について言及したことは、自らが認識する事実とは異なる内容を一方的に喧伝するかのようなビラ配布を伴う街宣活動を行わないことを組合に対して強く求めるための対応として、やむを得ないものと思料される。

 したがって、会社が組合に対して本件抗議文を送付したことは、組合の運営に対する支配介入に当たるとは認められない。

 

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